Michael Jordan has not left the building (4)

まあ、こうなったら、オリンピックという外圧が良い方向に影響してくれることを祈ります。
それにしても、マスコミが報じる熱気と私周辺の温度差がすご過ぎて笑える。

◇◇◇◆◇◇◇

ジョージ・コーラーは指にはめたリングに目をやる。それはブルズの初優勝を祝う記念品だ。ジョーダンは家族や親しい友人たちにレプリカを贈っていた。

「どうしてこの指輪をはめているか話したっけ?」と、コーラーは聞く。
「いや」と、ジョーダンは答える。
「親父さんに約束したんだ」

指輪が強奪されることを恐れていつも自宅に保管していたジョージは、ある日、皆からパップスと慕われていたジェームズに、「指輪はどこだい? せがれがあれを君に贈ったのは、引き出しに仕舞いこんでもらうためではないよ」と叱られた。

「いかにも言いそうだな」と、ジョーダンはほほ笑んだ。

パップスはジョージに、もし指輪が奪られても「私たちがもう一つやるから心配するな」と言った。

ジョーダンは、「私たち」という単語に高笑いする。
「いいねぇ。それも言いそうだ」

「親父さんにあんなことがあってから」と、ジョージは続ける。「ずっと指輪をつけているんだ」

記憶がよみがえる。パップスは、殺害された日、本来はシカゴへ飛ぶ予定だった。前の晩、ジョージに電話をかけて迎えを頼んでいる。ジョージはオヘア空港で待ったが、パップスは現れなかった。30分待ち、ジョージはママJ (デロリス・ジョーダンの彼の呼び方)に電話をした。少し待ってあげて、と彼女は言った。パップスはたぶん、飛行機に乗り遅れたのだろう。2時間か3時間後、シャーロットからの次のフライトが到着した。パップスは飛行機から降りて来なかった。ジョージはもう一度ママJに電話をかけた。彼女は、何かが起こったに違いない、夫から連絡があるだろう、と言った。パップスからの連絡は永遠になかった。

「くそ」と、ジョージは声をもらし、咳払いをする。

ジョージは話題を変えようとする。彼はジョーダンの機嫌に慣れていて、マイケルは悲しくなると無口になり、内にこもることを知っている。

「俺がこの指輪のために何本ジャンプショットを撃ったか知ってるか?」と冗談を飛ばす。
「バカ言ってろ」と、ジョーダンは言い返す。

しかし、この部屋からパップスの面影は消えない。「親父はフィアンセに会っていないんだ」と、ジョーダンは言う。「子供たちの成長も知らない。93年に死んだから。ジャスミンはまだ1歳だった。マーカスは3歳、ジェフリーは5歳だった」

「自分の父親の存在を一番感じるのはどこだい?」と、彼は問われた。

5秒、10秒、沈黙が続く。ジョーダンが椅子にぐったりもたれかかり、初めて太鼓腹が目立つ。窓の外は灰色の空。彼は唇をゆがめ、首をこする。目には生気がなく、急に年をとったように見える。父親が強殺されて―― 息子から贈られたレクサスと2つのチャンピオンシップリングを奪われた―― から20年たっても、ジョーダンがまだ父を必要としていることは明らかだ。彼はようやく答える。

「たぶん彼といるときだ」と、ジョージに向かってうなずきながら。

シカゴから運んだジョーダンの額入りの写真が壁に立てかけた状態で床に置かれ、掛けられるのを待っている。暗くて静かな空っぽのアリーナ、開いたトンネルのドアの向こうから白く輝く光が差し招いている。それは、喪失との折り合いを表しているようだ:老化との、引退との、死との。その中で、ジョーダンは光の方へ歩み、彼の肩を抱いた幻影も並んで歩いていく。それは彼の父だ。

「俺たちは徹夜で西部劇を見るんだ」と、彼は言う。

ジョーダンは取りつかれたように西部劇を見る。それが父の存在を感じるための行動であることは想像に難くない。彼の使用人の一人は、ジョーダンの自家用ジェットに乗ると何時間も銃撃戦や決闘にさらされるから、自分は航空会社の定期便に乗る方がいい、と冗談を言った。

「何か西部劇を挙げてごらんよ」と、ジョージは言う。「こいつは、その出だしも真ん中もラストも語れるから」

「いつも見ているんだ」と、ジョーダンは言う。「ガンスモーク(Marshal Dillon)のシリーズは全部見た」

「二人とも好きな西部劇は同じだと思うよ」と、ジョージは言う。
「本当に好きなのが3本あるよな」と、ジョーダンが応じる。

「“アウトロー”(Outlaw Josey Wales)だろ」と、ジョージ。
「大好きだ」と、ジョーダン。

「“真昼の(Two Mules・・・)」と、ジョージが始め、
「・・・死闘”(… for Sister Sara,)」と、ジョーダンが続ける。

「あと、“許されざる者”(Unforgiven)もいいね」と、ジョージ。
「親父はそれがお気に入りだった」と、ジョーダンが言う。

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3本ともクリント・イーストウッドですやん。ちなみに、ジョン・ヒューストン監督、バート・ランカスター、オードリー・ヘプバーン主演の『許されざる者』は "The Unforgiven"とのこと。

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